「エンディングノート」という言葉を、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。ご自身の思いや大切な情報を書き残しておく ── そう理解はしていても、いざ書こうとすると、何から手をつけてよいか分からず手が止まってしまう。そんな声を、私たちはよく耳にします。
本記事では、エンディングノートと、介護に的をしぼった「介護希望書」という考え方のちがいを整理したうえで、ご両親やご自身が無理なく書き始めるための第一歩を、やさしくご案内します。完璧に書き上げることを目指すのではなく、まず一行から始めてみる ── そのための道しるべとしてお読みください。
エンディングノートとは、どんなもの?
エンディングノートは、ご自身の人生やこれからについての思い、そしてご家族に伝えておきたい情報を、自由に書き留めておくノートです。法的な決まりはなく、形式も内容も自由。だからこそ、書く方の思いをのびのびと残せる一方で、「何を書けばよいのか」と迷いやすい面もあります。
書く内容は、人生の振り返り、これからの暮らしの希望、大切な人へのメッセージ、財産や連絡先の情報など、多岐にわたります。すべてを埋める必要はなく、書きたいところ、書ける項目から手をつけていく ── それがエンディングノートとの上手な付き合い方です。
「介護希望書」は、何がちがう?
「介護希望書」は、エンディングノートの幅広いテーマの中でも、とくに「これから先、どんなふうに暮らし、どんなお手伝いを受けたいか」という、ご本人の希望に焦点をあてた覚え書きのことです。
白紙のノートに自由に書くのは、慣れていないとなかなか難しいものです。暮らしの希望に的をしぼり、「どこで過ごしたいか」「誰に手伝ってほしいか」といった身近な問いから書き始めると、問いに沿って答えていくだけで、ご本人の思いが自然と形になっていきます。エンディングノートほど身構えずに、暮らしの希望から書き始められる ── それが介護希望書という考え方の利点です。まずはここから始めて、より幅広い思いを残したくなったら、エンディングノートへと広げていくのもよいでしょう。
書き始めるなら、「答えやすい問い」から
書き始めの最大のコツは、重たいテーマからではなく、答えやすい問いから入ることです。いきなり込み入ったことを考えようとすると、誰でも筆が止まってしまいます。
たとえば「好きな食べ物は?」「これからやってみたいことは?」「住み慣れたこの家で過ごし続けたい?」といった、ふだんの暮らしに近い問いなら、ご本人も気軽に答えられます。答えやすい問いをいくつか埋めていくうちに、書くこと自体に慣れ、少しずつ込み入ったテーマにも向き合えるようになります。一度に完成させようとせず、思いついたときに一項目ずつ書き足していくくらいの気持ちで、ちょうどよいのです。
ご両親に勧めるときの、やわらかな切り出し方
ご両親に書くことを勧めるとき、「もしものために書いておいて」という切り出し方は、ご本人を身構えさせてしまうことがあります。大切なのは、ご本人の希望を「教えてほしい」という、前向きな姿勢で伝えることです。
「お父さんがこれからどう過ごしたいか、ちゃんと聞いておきたいんだ」「お母さんの希望を、家族みんなで大事にしたいから」── そう伝えると、ご本人も「自分の思いを尊重してもらえる」と受け取ってくださいます。一緒にページを開き、問いを読み上げ、答えを書き取る。その対話の時間そのものが、ご家族にとってかけがえのないものになります。
書いたあとは、ご家族で共有しておく
せっかく書き留めた希望も、その存在をご家族が知らなければ、いざというときに活かせません。書いたもの、あるいは書き進めている冊子の在りかは、信頼できるご家族と共有しておきましょう。
また、人の思いは時とともに変わるものです。一度書いて終わりにせず、折にふれて読み返し、気持ちが変わったところは書き直していく。そうして更新を重ねることで、ご本人の「今の思い」を、ご家族が確かに受け取り続けることができます。介護の希望を書き留めたものも、ふだんの会話の中で少しずつ書き足し、見直していくことができます。
エンディングノートも「介護希望書」も、完璧に書き上げることが目的ではありません。ご本人が自分の思いと向き合い、それをご家族と分かち合う ── その過程にこそ、本当の意味があります。
まずは、答えやすい問いひとつから。気負わず、一行から。その小さな第一歩が、ご本人とご家族の安心につながっていきます。Norolu は、ご家族が大切な思いを書き留め、分かち合うその一歩を、これからも応援してまいります。