ご両親が年齢を重ねるにつれ、「これから、どこでどう暮らしてもらうのがよいだろう」と考える場面が訪れます。住み慣れた家で暮らし続けるか、子世帯と同居するか、近くに住まいを移すか、施設という選択を考えるか ── どれにも良さがあり、考えどころがあります。
住まいの選択に、唯一の正解はありません。ご本人の希望、ご家族の事情、地域の環境によって、ふさわしい形は一軒ごとに変わります。本記事では、家族で住まいを話し合うための土台として、それぞれの選択肢の特徴と、考えるときの視点を整理してご紹介します。
まず、ご本人の希望に耳を傾ける
住まいを考えるとき、つい家族の都合や心配が先に立ちがちです。けれども、そこで暮らすのはご本人です。何より先に、ご本人がどこで、どんなふうに暮らしたいかに、じっくり耳を傾けることが出発点になります。
「この家に、これからも住み続けたい?」「もし手伝いが必要になったら、どうしたい?」── そんな問いを、ふだんの会話の中で少しずつ重ねてみてください。住み慣れた家への愛着、家族に遠慮する気持ち、これからへの不安 ── ご本人の本当の思いが見えてくると、家族で考える土台ができます。
住み慣れた家で暮らし続ける ── 在宅という選択
もっとも多くの方が望むのが、住み慣れた我が家で暮らし続けることです。長年の暮らしが染み込んだ家には、何ものにも代えがたい安心があります。
在宅で暮らし続ける場合も、訪問のサービスや通いのサービス、福祉用具、住まいの小さな手直しなどを組み合わせることで、暮らしを支えることができます。手すりをつける、段差をなくすといった住まいの工夫は、介護保険の仕組みを使える場合もあります。何が使えるかは、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談すると、具体的に教えてもらえます。
同居・近居という選択
子世帯と同じ家で暮らす「同居」、近くに住まいを構える「近居」も、有力な選択肢です。すぐそばで様子を見守れる安心がある一方で、お互いの暮らしのペースや距離感をどう保つかが、長く続けるための鍵になります。
同居の場合は、生活の時間帯や家事の分担、それぞれのひとりの時間をどう確保するかを、あらかじめ話し合っておくと、無理なく続けられます。近居は、ほどよい距離を保ちながら支え合える形として、近年選ぶご家族が増えています。どちらも、「支える側が抱え込みすぎない」工夫が大切です。
施設という選択を、前向きに知っておく
施設への入居は、「家族が見放した」という後ろめたさと結びつけて語られがちです。けれども、専門の方々によるお世話を受けられる施設は、ご本人にとっても、支えるご家族にとっても、安心できる選択肢のひとつです。
施設には、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム、グループホームなど、さまざまな種類があり、受けられるお世話の内容や費用も異なります。種類が多く、家族だけで比べるのは難しいものですので、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、ご本人に合った選択肢を一緒に考えてもらうとよいでしょう。元気なうちに、見学だけでもしておくと、いざというときの備えになります。
費用と制度を、早めに調べておく
住まいの選択には、費用の問題が必ず関わってきます。在宅でのサービス利用、施設の入居費用や月々の負担 ── それぞれにかかる費用の目安を、早めに調べておくと、現実的な見通しが立てやすくなります。
介護保険のサービスは、原則として費用の一部を負担すれば利用できます。また、所得に応じた負担の軽減や、各種の助成が用意されている場合もあります。お住まいの市区町村の窓口や地域包括支援センターで、利用できる制度を確認しておきましょう。お金の見通しが立つと、住まいの話し合いも具体的に進められます。
一度で決めず、状況に合わせて見直す
住まいの形は、一度決めたら終わりではありません。ご本人の暮らしぶりやご家族の状況が変われば、ふさわしい住まいも変わっていきます。「今はこの形、状況が変わったらまた考えよう」と、柔軟に構えておくことが大切です。
大切なのは、ご本人の希望を真ん中に置きながら、家族みんなで折にふれて話し合い続けることです。完璧な答えを一度で出そうとせず、そのときどきの「いちばん納得できる形」を、一緒に選び直していけばよいのです。
親の住まいをどう考えるかは、ご家族にとって大きなテーマです。けれども、選択肢それぞれの特徴を知り、ご本人の希望を真ん中に置いて話し合えば、その家族にとっての納得のいく形が、きっと見えてきます。
ひとりで抱え込まず、地域包括支援センターやケアマネジャーといった専門の方々の力を借りてください。住まいの選択は、ご本人とご家族がこれからの暮らしを描く、前向きな相談でもあります。Norolu は、ご家族のそうした話し合いの時間に、そっと寄り添ってまいります。