カチャンと留め具を外すと、少しへこんだアルミのふたが開いて、ごはんと梅干しの匂いがふわりと立ちのぼる。そんなお弁当箱を、毎日カバンに入れて持ち歩いた覚えのある方も多いはずです。銀色に光るアルミやアルマイトの箱は、当時のお弁当のいちばんの主役でした。
今はプラスチックの二段式や、あたたかいまま食べられる保温ジャー、木の香りがする曲げわっぱまで、お弁当箱の種類はぐんと増えました。水筒も、肩から下げる大きな魔法瓶から、片手で持てる軽いステンレスボトルへと様変わり。持ち歩いたお弁当の「むかしと今」を、ゆっくり並べて振り返ってみましょう。
お弁当箱 アルミから種類豊富な今へ
当時の箱は角がまるくて、使ううちにあちこちへこんでいくのが当たり前。留め具をパチンと留める音や、ふたの裏についたごはんつぶまで、どこか懐かしいものです。名前を彫ったり、シールを貼ったりして、自分の箱を見分けていた方もいるでしょう。
今は仕切りのついた二段式や、汁もれしにくいパッキン付き、木のぬくもりが感じられる曲げわっぱなど、好みや中身に合わせて選べます。色や柄もさまざまで、売り場に並ぶお弁当箱を眺めているだけでも楽しいものになりました。
温めかた ストーブの上から電子レンジへ
冬になると、みんなのお弁当箱をストーブの周りにずらりと積み上げて、ほんのり湯気が立つのを待ったものです。順番に温まるよう箱を入れ替えたり、こげないように気をつけたり。お昼の時間には、ごはんとおかずのいい匂いが教室じゅうにただよっていました。
今は電子レンジで手軽に温められるほか、朝あたたかいスープや煮物を入れておけば、お昼まで温かさが続くスープジャーもあります。ストーブを囲んだ賑やかさとはまた違う、便利であたたかいお昼になりました。
水筒 肩から下げる魔法瓶から軽いボトルへ
当時の魔法瓶は中がガラスでできていて、ぶつけると割れてしまうことも。遠足のときに落として「カラン」と音がすると、がっかりしたものです。それでも冷たい麦茶や温かいお茶が飲めるのは、うれしいごちそうでした。カバーの肩ひもを斜めがけにして歩いた姿も、思い出に残っています。
今のステンレスボトルは軽くて割れにくく、保温も保冷も長持ちします。ワンタッチで開くふたや、持ちやすい細身のかたちなど、使い勝手もよくなりました。荷物が軽くなった分、お出かけがぐっと楽になっています。
中身 日の丸弁当から彩りゆたかなおかずへ
竹の皮でくるんだおにぎりや、経木の折に詰めたごはんなど、包み方にも味わいがありました。おかずは卵焼きや煮物、漬け物といった素朴なものが中心で、それでも家の人が朝早くから作ってくれたお弁当は、何よりのごちそうでした。
今は色とりどりのおかずを組み合わせたり、前の晩の作り置きを詰めたりと、手軽に見ばえよく仕上げられます。ミニトマトやブロッコリーで彩りを添えるのも、すっかりおなじみになりました。手のかけ方は変わっても、お弁当に込める気持ちは今も昔も同じです。
手入れ 洗って布巾でふく手間から使い捨てまで
アルミの箱は水気を残すと傷みやすいので、洗ったあとしっかりふいて乾かしました。毎晩の後片づけは少し手間でしたが、翌朝また同じ箱に詰めるのが、日々の暮らしのリズムでもありました。
今はお店で買えるお弁当や、そのまま捨てられる容器も身近になり、忙しい日には気軽に頼れます。くり返し使う箱の愛着と、手軽さの便利さ。どちらも選べるのが、今の食卓のよいところかもしれません。
特別な日 遠足のごちそう弁当は今も家族の楽しみ
遠足の前の晩は、明日のお弁当を思ってなかなか寝つけなかったという方もいるでしょう。ふだんは入らない海苔巻きや唐揚げ、りんごのうさぎなどが詰まった箱を広げる瞬間の、あのわくわくした気持ち。青空の下でみんなと食べたお弁当の味は、いつまでも忘れられません。
今も行楽やお花見のお弁当は、家族みんなの楽しみです。作る道具や中身は変わっても、外で広げるお弁当のうれしさは、世代を越えて受け継がれています。
銀色のアルミの箱、ストーブの上の湯気、肩から下げた魔法瓶。お弁当ひとつを思い返すだけで、あの頃の教室や遠足の景色が次々とよみがえってきます。ご家族やお孫さんと一緒に、「どんなお弁当箱を使っていた?」「遠足のおかずは何が好きだった?」と、昔のお弁当の話をゆっくり語り合ってみてください。むかしと今をくらべながらの食卓の思い出話は、きっと温かいひとときになるはずです。