夕暮れが近づくと、そろそろあかりを用意する時間でした。石油ランプに火をともし、ろうそくをしまった場所を確かめる。あかりは、ただ部屋を照らすだけのものではなく、一日の区切りをつける大切な暮らしの中心だったように思います。
今はスイッチひとつでパッと部屋中が明るくなり、あかりのありがたさを忘れてしまうほどです。ランプのほやを磨いた手ざわりや、停電の夜にゆらめいたろうそくの灯り。昔と今のあかりをくらべながら、なつかしい情景を思い出してみませんか。
手元を照らすランプから、部屋全体を照らす電灯へ
かつては夕方になると、石油ランプに火を入れるのが日課でした。ランプの灯りは思いのほか小さく、その明かりの届く範囲に家族が寄り集まったものです。ちゃぶ台のまわりに顔を寄せ合い、針仕事をしたり本を読んだり。あかりの届くところが、その夜の家族の居場所でした。
今は玄関から廊下、台所まで、スイッチを入れれば部屋全体が明るくなります。どこにいても手元がはっきり見えるのは、当たり前のようでいて、昔から思えばたいそうな変わりようです。
ほや磨きと芯切りの手入れ、手間いらずのLED
石油ランプは、使っているうちにほやが煤(すす)で黒くなります。翌朝、新聞紙やぼろ布でていねいにこすって、また透きとおったガラスに戻す。芯が長すぎると煤が出るので、はさみで先を切りそろえる芯切りも大事な仕事でした。あかりを保つには、毎日の手入れがついてまわったのです。
今の照明、とりわけLEDは、つけっぱなしでも煤が出ることはなく、拭き掃除もたまにで十分です。手入れの手間から解き放たれた分、暮らしはずいぶん身軽になりました。
裸電球ひとつの茶の間から、明るさを選べる部屋へ
電気が家々に行きわたったころ、茶の間の真ん中には笠のついた電球や、剥き出しの裸電球が一つ下がっているのが定番でした。ひもを引っぱってカチッとつけ、寝るときにまた引いて消す。あの引きひもの手ごたえを覚えている方も多いことでしょう。部屋の隅はほの暗く、それはそれで落ち着く明るさでした。
今は天井いっぱいに広がるシーリングライトが主流で、手元を明るくしたいとき、くつろぎたいときと、明るさを段階的に変えられます。読書灯や間接照明を足して、部屋ごとに好みの雰囲気をつくる楽しみも生まれました。
停電に備えたろうそく、今も頼りになる防災ランタン
台風の夜など、急にプツンと家じゅうが暗くなることがありました。そんなとき、決まった引き出しからろうそくとマッチを取り出し、火をともす。ゆらゆらと揺れる灯りが壁に大きな影を映し、少し心細くも、家族の顔が浮かび上がって温かい時間でもありました。
今は乾電池や充電式のLEDランタンを備えているご家庭が増えました。明るくて倒れても火の心配がなく、いざというときに頼りになります。あかりを備えておく安心は、昔も今も変わらない暮らしの知恵です。
熱をもった白熱電球、長もちで省エネのLED
白熱電球は、つけていると笠がほんのり温かくなり、うっかり触るとあちちと手を引っこめたものです。切れると新しい電球に取り替えるのも家庭の役目で、予備の電球を戸棚にしまっておくのが習わしでした。あかりの色は、どこか温かみのあるオレンジがかった光でした。
今のLEDは熱をもちにくく、寿命もぐんと長いので、電球を取り替える回数がめっきり減りました。消費する電気も少なく、家計にもやさしい。明るい昼白色から温かい電球色まで、光の色合いを選べるのも今ならではです。
夕暮れで終わった一日、夜も明るい今の暮らし
あかりが貴重だったころ、日が沈めば自然と一日は仕舞いに向かいました。早めに夕餉(ゆうげ)をすませ、あかりを大事に使いながら少し過ごして、早めに床につく。暗くなったら休むという、日の巡りに寄り添った暮らしがそこにありました。
今は夜遅くまで部屋を明るくして、テレビを見たり、本を読んだり、思い思いに過ごせます。夜の時間が広がったのは便利なことですが、昔の、暗くなったら休むゆったりとした暮らしのよさも、ふと懐かしく思い出されます。
ランプのほやを磨いた朝の手ざわり、停電の夜にみんなで囲んだろうそくの灯り。あかりにまつわる思い出は、ご家庭ごとにきっと違う色をしていることでしょう。
「うちのランプはこんな形だった」「引きひものある電球、なつかしいね」。そんなふうに、ご家族やお友だちと昔のあかりの話をしてみてください。ひとつの灯りをきっかけに、あたたかな思い出話が次々とよみがえってくるはずです。