冬の寝る前、やかんの湯を沸かして湯たんぽに注ぎ、こぼれないようにきゅっと栓をしめて、古い手ぬぐいや座布団カバーで丁寧にくるむ。そうして布団の足元に差し入れた、あのじんわりとした暖かさを覚えていらっしゃる方は多いはずです。冷たい布団に足を入れる瞬間の身の縮む感じと、湯たんぽの置いてある一角だけがぽかぽかしていた安心感は、今でも思い出す冬の情景です。
あんかや行火で寝床をあたためた家庭もありました。今はスイッチひとつで温まる電気毛布や、軽くて暖かい寝具が身近になりましたが、昔の寝床の暖のとり方には、その家ならではの工夫と手間がありました。ここでは「昔はこうだった」「今はこう」を並べながら、寝るときの暖のとり方をゆっくり振り返ってみましょう。
湯たんぽと、電気毛布や温かい寝具
湯たんぽの支度は寝る前のひと仕事でした。台所でお湯を沸かし、金属や陶器の湯たんぽの口までそそいで、しっかり栓をしめる。熱すぎて直に触れないので、使い古した手ぬぐいやタオル、袋状の布でくるんでから、布団の一番冷える足元へ入れておきました。しばらくすると、その周りだけがほんのり温まっていて、足を伸ばすとちょうどよい暖かさに出会えたものです。
今は電気毛布のスイッチを入れれば、寝る前から布団全体がふんわり温まっています。あたたかい起毛の毛布や、軽くて保温性の高い掛け布団も手に入りやすくなりました。お湯を沸かす手間はなくなりましたが、布でくるんだ湯たんぽの、あのやわらかな熱の伝わり方をなつかしむ声も少なくありません。
あんかや行火と、コンセントで温める寝具
行火は、炭や豆炭を入れて使うものや、後には電気で温まるものもありました。木の枠に布団をかけ、その下に熱の元を置いて、こたつのように寝床の一角をあたためます。就寝前に布団の中へ入れておいて、床に就くころには足元がほかほかになっている。冷え込む夜には、家族が順番に足を差し入れて温めた思い出をお持ちの方もいるでしょう。
今は電気あんかや電気毛布をコンセントにつなぎ、スイッチひとつで温度を選べます。炭火の始末をしたり、灰の後片づけをしたりする必要もなくなりました。手間が減った分、寝る前のあの準備の時間や、行火を囲んで交わした何気ない会話が、いっそう懐かしく感じられます。
朝のお湯の使い道と、繰り返し使える製品
ひと晩たった湯たんぽの中のお湯は、朝になるとほどよいぬるま湯になっています。冷たい水道の水がこたえる冬の朝、そのお湯を洗面器にうつして顔を洗ったり、手を温めたりと、最後まで無駄なく使い切る暮らしの知恵がありました。お湯を沸かすことがひと手間だった時代ならではの、ものを大切にする工夫です。
今の湯たんぽは、お湯を入れ替えて何度も使えるものが主流で、レンジで温めるタイプや、注いだお湯をそのまま流して次の日にまた新しく入れるものなど、形もさまざまです。使い方は変わっても、あたためたものを最後まで役立てるという気持ちは、今の暮らしにも通じるものがあるかもしれません。
家ごとの工夫と、タイマー付きの便利な機能
湯たんぽをどの布でくるむか、布団のどのあたりに置くか、家族の何人分をどう用意するか。それぞれの家に、それぞれのやり方がありました。子どもの布団には少しぬるめにして入れる、朝までほんのり残るように厚めの布で包む、といった心づかいは、家族を思う気持ちそのものでした。祖母から母へ、母から子へと、寝床のあたため方が自然と受け継がれていった家庭もあります。
今の電気毛布や電気あんかには、時間がたつと自動で切れるタイマーや、温度を細かく選べる機能がついているものが多くあります。つけっぱなしを気にせず眠れる安心感は、今ならではの便利さです。それでも、布のくるみ方ひとつに込められた昔の家庭の工夫には、機械にはない手のぬくもりが感じられます。
金属や陶器の湯たんぽと、やわらかい素材やコードレス
昔ながらの湯たんぽは、波打った形の金属製や、どっしりとした陶器製が知られていました。金属のものは熱の伝わりが早く、手に持つとずしりと重みがあり、陶器のものは長く暖かさを保ってくれます。使い込むほどに味わいが出て、毎年冬になると押し入れから出してくる、季節の道具のひとつでした。
今はやわらかいゴムやプラスチック、ふかふかのカバーがついた湯たんぽや、お湯を使わずに充電して温めるコードレスのタイプまで登場しています。軽くて扱いやすく、抱きかかえるように使えるものもあります。素材や形は移り変わっても、寝る前に何かをあたためて布団に入れるという、あのささやかな習慣は、今も昔も変わらず続いています。
湯たんぽや行火であたためた昔の寝床と、電気毛布やタイマー付き寝具が身近な今。くらべてみると、道具は移り変わっても、寒い夜を少しでも暖かく過ごしたいという気持ちは、ずっと変わらずに続いていることに気づかされます。
「うちではこんな湯たんぽを使っていた」「行火に足を入れて眠ったね」と、ご家族で思い出を持ち寄れば、冬の夜の情景がいくつもよみがえってくるかもしれません。世代によって知っている道具は違っても、その違いこそが会話の楽しいきっかけになります。温かいお茶でも飲みながら、どうぞゆっくりと昔話に花を咲かせてみてください。